毎日使うお風呂の浴槽も、永久に使えるわけではありません。長年使用していると、様々な劣化のサインが現れ始めます。それらは、浴槽が寿命を迎え、交換を検討すべき時期が来ていることを知らせる重要な合図です。最も分かりやすいサインは、浴槽本体の「ひび割れ」や「亀裂」です。最初はヘアラインクラックと呼ばれる髪の毛ほどの細い線でも、放置すれば水圧や温度変化によって亀裂は広がり、水漏れの原因となります。特に、浴槽の裏側など見えない部分で水漏れが進行すると、建物の土台を腐らせるなどの深刻な事態に繋がりかねません。表面的な傷だけでなく、お湯を張った時に浴槽が「きしむ」「たわむ」といった感覚がある場合も、浴槽の強度が低下している証拠であり、交換を考えるべき危険なサインです。また、見た目の劣化も重要な判断基準です。長年の使用でついた細かい傷に汚れが入り込み、掃除をしても黒ずみや黄ばみが落ちなくなった状態は、衛生面でも問題があります。表面のコーティングが剥がれ、ザラザラとした手触りになっている場合も、快適な入浴を妨げる要因となります。さらに、「お湯がすぐに冷めてしまう」と感じるようになったら、それは浴槽の保温性能が低下しているサインかもしれません。浴槽の材質ごとの一般的な寿命の目安としては、最も普及しているFRP(繊維強化プラスチック)で15年から25年、人造大理石で20年から30年、耐久性の高いホーローやステンレスでも20年から30年程度と言われています。もちろん、使用頻度やメンテナンス状況によって寿命は変わってきますが、これらのサインが見られるようになったり、設置から20年以上が経過したりした場合は、単なる補修ではなく、根本的な解決策として浴槽交換を具体的に検討するタイミングと言えるでしょう。