古くなった浴槽の交換費用を少しでも節約したいという思いから、「自分で交換できないだろうか」とDIYを考える方がいるかもしれません。しかし、結論から言うと、浴槽交換のDIYは極めて難易度が高く、様々なリスクを伴うため絶対にお勧めできません。その理由は、浴槽という設備が持つ特殊性にあります。第一に、浴槽は非常に「重くて大きい」という物理的な問題があります。FRP製の比較的軽量なものでも数十キロ、ホーローや人造大理石製となれば100キロを超えることも珍しくありません。これを一人や二人で、狭い浴室や搬入経路を傷つけずに運び出すのは至難の業です。無理に運ぼうとして、壁や床を傷つけたり、腰を痛めたり、浴槽自体を落として破損させたりするリスクが非常に高いです。第二に、「給排水管の接続」という専門的な技術が必要になる点です。給水・給湯管や追い焚き配管、排水管の接続は、水漏れを起こさないよう、正確かつ確実に行わなければなりません。少しでも接続が甘ければ、床下で水漏れが発生し、建物の土台を腐らせるなどの大惨事を引き起こす可能性があります。これは、後から修理しようとすると、何倍もの費用がかかる深刻なトラブルです。第三に、最も重要なのが「防水処理」です。特に在来工法の浴室では、浴槽の周りを防水性の高い状態に復旧させる必要があります。この防水工事に不備があると、壁の内部や床下に水が浸入し、カビの発生や構造体の腐食の原因となります。これらの作業は、長年の経験と専門知識を持つプロだからこそ、確実に行えるものです。目先の費用を節約しようとしてDIYに挑戦した結果、取り返しのつかない失敗を招き、結局はプロに依頼するよりもはるかに高額な出費になってしまうケースは後を絶ちません。安全と安心、そして確実な施工品質のためにも、浴槽交換は必ず専門の業者に依頼しましょう。